金曜日の彼女【完】
「今日は金曜日だよな。図書委員だろ?」

「……うん」

泣き出しそうだった目を擦りながら頷く。


今日は金曜日。

私達が再び出会って恋をした、金曜日。



―――…


「龍太…いきなり来たりするから…チョコ用意してないよ…」

どうせ会えないと思って、朝、和兄にあげてしまった。

和兄はかなりのハイテンションで会社に行ったけど…。

どこまでシスコンなんだか。


「ハハ…別にいいって。こうして会えたんだから。それでいい。な?」

「…うん」


会いたいって、散々わがまま言ったのは私。

なのに、龍太は怒りもせずに私を優しく包んでくれる。


ほらっと差し出す手を

そっと握り

周囲のどよめきの中、2人で校舎へと歩き出した。



「龍太!」

沖本君が駆け寄ってくる。

その表情はもうくしゃくしゃの笑顔。

「慎、久しぶり」

「おう!」

2人は拳と拳をつき合わせて笑う。



その後ろからひょっこりと姿を現した有紗。

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