金曜日の彼女【完】
背中に手を回した龍太。

そっと撫でながら


「琴葉だって…事故に遭う瞬間までは…きっと覚えていてくれたと思うよ」

「…――っ」


「だから――…もう一度」

背中にあった手がゆっくりと前に滑り、そのまま後ろから抱かれる形になる。


「もう一度ここで…」

耳元で龍太の低く甘い澄んだ声が響く。

「……」


「探して」

私の指で輝く赤い指輪を龍太の長い指が撫でる。

「見つけて」

スッとそれを持ち上げて

「指切り」

そこにキスを落とす。


小指と小指を合わせる。


「…それだけじゃ…ダメ」


“指切りだけじゃダメだよ”

あの日、龍太が言ったもう1つの約束。


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