金曜日の彼女【完】
「龍太と行きたいとこなんて、いっぱいあるよ?映画に水族館、遊園地、海、あと動物園とか…」

「動物園?――…プッ!」

なぜか、動物園に反応して笑い出す龍太。

「な、なに!?」

思わず眉を寄せ、首を傾げながら龍太を見る。

「クククッ…や、お前さ…昔、動物園でゴリラに唾吐かれたの、覚えってっか?」

「えーっ!?な、なんで龍太が知ってるの?」

するとお腹を抱えて笑いながら

「一緒に行ったんだよ、小さい頃。そしたらいきなり…お前に――…クックックッ」

よっぽどおかしいのか、ヒーヒー言いながら笑う。

そんな龍太をジロリと睨みながらも、そのときのことを思い出してみる。


確かに――…小さい頃、動物園に行ったとき、ゴリラの檻の前を通ったら、いきなり唾を吐きかけてきた。


あれはどう見ても私を狙ってた。

だって、唾を吐く前に私のこと、すごーく睨んでたから。


あれ以来、何度動物園に行ってもゴリラの檻の前だけは避けて通ってる。


だけど、あのとき…龍太も一緒だったんだ…。


「…―――じゃあ、動物園に行きたい」

思い出の街にある動物園。

初めてのデートはそこに決まった。


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