金曜日の彼女【完】
「龍太!早く!こっち、象がいるー」

少々興奮気味に駆け出す私の後ろを、呆れ顔でついてくる龍太。

「お前な、象はいるだろ。動物園なんだから」

「あ!あっちにはきりんがいるよ。行ってみよ!」

だるそうに歩く龍太の手を引っ張ってきりんの前に行く。

その途中で例のゴリラの檻が目の端に入ってきた



「ククク…ゴリラいたぞ?行かないのか?」

「――…行かない」

笑いすぎて目に涙まで溜めている龍太を睨む。

「もう!龍太笑いすぎ!」

ボカボカと龍太の背中を叩いた。



お昼になり、ベンチに座って作ってきたお弁当を拡げた。

「おっ!うまそうじゃん!琴葉が作ったの?」

「全部じゃないよ。この唐揚げと卵焼きはお母さん」

前に図書室で取られてしまったときのことをふと、思い出した。


龍太はパクッとその唐揚げを一口食べると

「…ん!うまい!――…あのときと同じ味だな…」

ポツリと呟いた。

同じことを思い出していたんだね――…。


「うん…お母さんの唐揚げと卵焼きは最高なのよ」

「そうだな。……ところでお前が作ったのはどれだ?」


「このハンバーグとポテトサラダ!」

今日の出来にはちょっと自信があった。

龍太の箸がハンバーグを掴む。


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