金曜日の彼女【完】
ほんの少し開いたドアの隙間から部屋の中をそっと覗いてみる。


ベッドの端で座っている龍太が目に入った。


―――…その横顔はこれままで一度も見たこともないような

それは苦渋の表情。



そうだよね――…不安なのは私だけじゃない。

一番不安なのはきっと

龍太の方だよね。


ごめんね。


部屋に入ると、龍太の前にひざまずいてそっと見上げる。

その頬に手を這わせると

触れるだけの軽いキスを落とす。

「――…琴葉」

掠れた声の龍太が私の名前を呼ぶ。

立ち上がるといつもよりも小さく感じる背中に腕を回して龍太を包み込む。


「待ってる。待ってるから…絶対に」

「―――…っ…」

だらんと下に下ろされていた腕を上げて私の服を掴む。


顔を隠していてわからなかったけれど、泣いていると感じた。

微かに震えるその体。



静かな時間が流れる―――…。


部屋の中には夕焼けのオレンジ色の光が射し込み龍太の明るい髪色をさらに照らす。


その髪に顔を埋めていると

龍太の香りで途端に私の涙腺は緩む。


「琴葉――…」


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