金曜日の彼女【完】
「ごめんね、みんな。このブーケの送り主はもう決めてあるの」

そう言いながらゆっくりと階段を降りてくる。


「えーっ!?」

「なに?どういうこと?」

再びざわつき始める会場。


そして彼女が立ち止まる。


「はい、琴葉」

「――…え?…私?」

情熱的な赤や濃いピンクのブーケ。

負けん気が強くて

何事にも中途半端を嫌う。

そんな彼女にぴったりのブーケ。

「有紗…でも…これは――」

私にこれを受け取る資格――あるの?


躊躇する私に

「いいから!さっさと受け取りなさいよ」

強引にそれを手渡す有紗。


「有紗は最初から決めてたんだよ。そのブーケ、絶対琴葉ちゃんにあげるって」

「沖本君―――…」


ふわりと風に流されて薔薇の香りがいっぱいに拡がる。


「ありがとう。有紗、沖本君、結婚…おめでとう」


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