金曜日の彼女【完】

キス

5時間目をそのまま図書室で過ごしてしまった私の携帯が突然鳴った。

ゆっくりと表示に目を移す。

“着信 有紗”

「――……教室…もどらなきゃ…心配してるよね」

そう思ってもさっきの彼の言葉を思い出してまた体が動かなくなる。

…私って…とんでもない人を好きになってしまったんだ。

金曜日だけしか彼女になれなくて、好きも言ってくれなくて…。

それでも好きだなんて…私って…なんかバカみたい。


だけど…どこかで期待している自分もいる。

いつか、もしかしたら、私だけを見てくれる日がくるかもかもしれないって。

それはとても淡く儚い夢…だけど。

思うだけなら…いいよね―――…。

――…―――

―――…


「琴葉!どうしたのよ!携帯にも出ないし!」

教室に戻ると同時に飛んできた有紗。

「ご、ごめん…本読んでて…マナーにしてたから…気づかなかった」

そうごまかした。――…でも

「――…琴葉、6時間目、サボるよ」

そう言って私の腕を無理やり掴んで教室を出た。


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