金曜日の彼女【完】
そして放課後―――


当番をサボろうかとも考えた。昼休みの出来事を思えば、彼の顔をまともに見れるかどうか、わからなかったから…。

でも、やっぱり私の足は図書室に向かっていた。





ドアをゆっくり開けてみると、受付に誰かがもう座っていた。

「――…あ…琴葉ちゃん」

いたのは沖本君だけだった。

「…遅れてごめんね、沖本君」

急いで受付の椅子に座る。

「いや、俺も来たばっかだし…龍太もまだだしな…」

“龍太”……名前を聞いただけでやっぱりドキドキしてしまう。

あんなひどいこと言われたのに…。



「あのさ…」

「え?」

沖本君がなにかを言いかけたとき

ガラッ――

「悪ぃ、まーた遅れた!」

彼が勢いよく入ってきた。


「…龍太、図書室では静かにしろよ」

沖本君が彼を睨んでる。

「…なんだよ…慎、なんか怒ってる?」

「別に…」

沖本君はそう言うと立ち上がって奥の方で本の整理を始めた。

…沖本君、なにか言いかけてたけど…

それっきり沖本君は無言で仕事をこなし、受付には戻ってこなかった。

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