金曜日の彼女【完】
外が暗くなり始め、生徒ももう来なくなったので片づけをして図書室を出た。

「じゃ、お先」

沖本君が先に学校を出る。


「――…なんか、今日の沖本君…変だったね…」

「……」

走り去る沖本君の背中をジッと見ている彼にそっと声をかける。


「…帰ろう?」

私はそっと彼の手を握った。

不安はある。この先どうなるか、なんてわからない。だけど今は…

彼も握り返してくれる。

そして――


2人の視線が絡み合い。


彼の顔が、近づいてきた。


…もしかして…キ、キス!?

寸前でギュッと瞳を閉じた。


が、


「…ごめん」

「え?」

そっと目を開けてみる。

そこに見えたのは、ゾッとするほどの冷たい瞳。

そして――


「さっき言い忘れてたけど」

彼は言った。

「束縛なんかしたら即、別れる。それから…」

唇の端を上げ

「あと、キスはしないから」

そう言って妖しく笑う。


「―――」


私の恋は…


前途多難………。


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