金曜日の彼女【完】
「…―っく…」

なにも言えなくなった彼女達は慌ててその場をあとにした。

残された私はただ呆然としていた。

「…大丈夫だった?」

その声にハッとして沖本君を見る。


―――…図書室でいつも見ている彼だった。



「あ、ありがと」

「琴葉ちゃん…怪我…してるね」

見ると腕に少し擦り傷と痣ができていた。

「保健室…行こうか」

そう言って私の手を引き校舎に戻る。

ただ黙ってついていった。



さっき、彼女達に凄んでいた沖本君と、今、私の手を引いている沖本君のあまりの違い――…






ガラッ――


「…先生…いないみたいだな」

沖本君は適当に戸棚を漁り、絆創膏や消毒液を取り出した。

「――…座って?」

私は言われるまま椅子に座った。

「あ、あの…沖本君…たいしたことないから」

そう言ってはみたものの、無言で私の怪我の手当をする彼に強く言えない。

しばらくして

「…あーいうの…初めて?」

そう聞いてきた。


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