金曜日の彼女【完】
そして――次の金曜日がやってきた。

図書室に入ると沖本君が来ていた。

「あっ、沖本君…。この間はありがと」

ペコリと軽く頭を下げる。

「やめてよ、琴葉ちゃん。俺の方が悪いことにしたのに」

慌てて手を翳して困った表情を向けてきた。

「ううん、気にしないで。助けてもらえて本当によかったって思ってるから」

「…うん」

「それより…この前言ってたことだけど…」


“特別”


その意味を知りたい。


「――…ごめん…あれ、忘れて」

「え?…なんで――」

聞こうとしたら



ガラッ―――



龍太が入ってきた。

「――…なに、もしかして…今日は俺が邪魔者?」

皮肉たっぷりに聞こえるのは気のせいじゃないだろう。


「そんなわけないだろ!」


沖本君は龍太を睨みながらその場を離れ、本の整理をすると言って奥に行ってしまった。


「なんだ?…慎のヤツ、機嫌悪いな、なあ?」

そう言いながら私の隣に座る。

「んで?――アイツとなに話してた?」

肩を抱き寄せ、耳元で低く囁くように訊かれる。

「な、なにも…」

真っ赤になる私の反応をどこか楽しんでいるようにも見える。

「なーんか、気になるな…慎となに話してたのか」

そう言いながら彼の手がスッと私の胸の辺りに下りてきて


「――…っ!りゅ――…んっ」

「しっ!」

私の口をもう片方の手で塞いでしまった。

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