金曜日の彼女【完】
―――――――――


―――――…あの夜。

鳴りやむ様子のない携帯を睨むように見ていた龍太。

「…龍太?」

私の方をチラッと見たあと、結局電話に出た龍太。


「―――…なんの用だよ」

相手の声は少し離れた位置からも聞こえるほど大きかった。

どこか騒がしい場所にでもいるのだろうか。


…女の人の声。


相手が女性だということはわかったけれど、さすがに話の内容までは聞き取れなかった。

「はあ?…なに言ってんだ?」

龍太が怒鳴るように話している。

「…冗談だろ」

一体、どんな話をしているのか、龍太がだんだん苛ついてきているのがわかった。

「……わかった…ああ」


電話を切って私の方を向くと

「琴葉…今から客が来るから今日は帰ってくれ」

「え!?…お客さん?」

電話の相手?…女の人?

「…タクシー拾ってやるから…」

有無を言わせず、私の鞄を持って先に玄関に行ってしまった。

仕方なく、龍太のマンションを出て、拾ってくれたタクシーに乗って家まで帰った。

タクシー代は龍太がいつの間にか運転手に渡していた。


いったい…誰なの。


掴みかけたと思った龍太の心が、謎の女性の出現でまた、離れてしまった気がしていた。


――――――…


――――


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