金曜日の彼女【完】
「琴葉ちゃん…心配そうな顔して…そんなにアイツが好きなんだ…あんなに自分勝手なのに」

不安げな表情の私に呟く。

「――…ねえ…沖本君」

「…なに?」

「沖本君はさ、ホントに龍太が勝手な男だって…思ってるの?」

「え―――な、なんで?」

「んー…だってね?ホントにそう思ってるなら…友達…ううん、親友やってないんじゃないかなって…」

「……」

「今でも…親友なのは…龍太の良いところもいっぱい知ってるってことだよね?…龍太も…沖本君には心許してるみたいだし…」

私のそんな言葉になにかを考えている様子の彼。



その間も何人かの生徒が図書室に来たけれど、なぜか沖本君はずっと無言だった。


…私…そんなに変なこと言ったかなぁ… 。


そんなことを思いながらその日の委員の仕事は終わった。

帰りは龍太の代わりに沖本君が駅まで送ってくれることになった。

その帰り道

「なあ…琴葉ちゃんはさ、龍太にも良いところ、あると思う?」

ずっとしゃべらなかった彼が訊いてきた。

「龍太の?…うーん…改めて聞かれると…わかんないけど…」

少し考えてから

「きっとあるよ?私の知らない良いところ」

そう言った私を見て、クスリと微笑んだあと、彼はオレンジ色に染まりゆく空を見上げた。

けれど、その瞳はどこか遠くを見ているようにも感じた。


そして、また私に視線を戻すと

「琴葉ちゃんに…龍太の秘密を教えてあげる」

迷いのない瞳で、そう言った。


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