金曜日の彼女【完】
アイツは俺が知る限り、女に本気になったことがない。

毎日、曜日の違う彼女を連れていても、どこか冷めた瞳をしている。

そして、アイツはそんな彼女達に冷たい。

束縛するな、詮索するな、嫉妬もするな、そして、キスはしない…。

女をどこか馬鹿にしているような龍太に、理由を何度も聞いた。

「…復讐…してる」

復讐…?

たかが15、16のガキが女に復讐って…。

龍太がこんな風に女と付き合い始めたのは中3の終わり頃から。

それまではごく普通の中学生だった。

俺に初恋の話をしてくれたのも…中学の頃――


ずっと昔の幼い頃の思い出――…


その子のことが忘れられないって、まだ純粋な瞳でそう言っていた。

なのに――…ある日突然、アイツは変わった。

毎日のように女を変え、挙げ句に曜日の違う彼女を作り――…

本気で復讐していると言ってもおかしくなかった。

龍太になにがあったのかはわからない。

復讐している――…そう言ったあと

「…だけど…誰と付き合っても…虚しいだけなんだ…。それにな…セックスはできるのに、なのにキスだけが…どうしてもできない」

そう苦しそうに言葉を吐いた。

それが多分、龍太の本音――

どんなに――誰と付き合ったとしても――…

アイツを救えるのはきっとたった一人。

忘れられない初恋の相手だけ。


ずっとそう思ってた。


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