金曜日の彼女【完】
なのに――突然現れた彼女は、なぜか龍太の心を捕らえた。

帰り際に一度見かけた、龍太が彼女にキスをしようとしているところを…

結局は、しなかった。

けれど、そのときの龍太の表情は今でも忘れることができない。

彼女が目を瞑った瞬間――…愛しそうに、包み込むような優しげな瞳。

あれは俺が知っている昔の龍太。

初恋の話をするときの龍太と同じだった。

純粋だった頃の龍太だった。


だけど――…


どうして彼女なんだ。

俺だって、好きになってしまったのに――…

もし、龍太が本気で彼女を好きなら。

俺は諦める。この気持ちを封印しよう。

そう決めたのに――…



なぜ…彼女は泣くんだ…。


俺の前でなんて、涙を流さないでほしい。


俺の気持ちが止められなくなる――…。


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