金曜日の彼女【完】
「な、なにも…泣いたのは…会えて嬉しかったから…」

「……お前…誰に聞いた」

「え…」

龍太を見上げれば、そこにはあの、冷めた瞳の龍太―――

「この場所…バイトのこと」

「え…だから…偶――」


「―――…琴葉ちゃん!」

私を呼ぶ声。

「…――慎か」

ガタガタと体が震え始める。

さっきの出来事が一気に頭をもたげ、龍太の声色に恐怖を覚える。

そして…ガシッと腕を強く掴まれた。

「―――…痛っ」

「琴葉ちゃん!」

「来るな!」


龍太と沖本君は互いに睨み合い動かない。

間にいる形の私は腕の痛みと息苦しさで立っているのもやっとの状態なのに…


「琴葉…―――慎になにを言われたか知らないが…」

「…りゅ…うた?」

カチカチと歯と歯がぶつかる音が耳に妙に響いてきた。

「これ以上…詮索するなら―――…」


「えっ――…」

いや!待って…言わないで!

声にならない言葉。


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