初恋
俺はゼーゼー息を切らしながら
裕大を睨みつける。
いつも沙奈ちゃんの名前を呼ぶと目を輝かせるはずなのに、
今日の裕大は悲しい顔をしていた。
ケンカとか、か・・・?
それとも「お兄ちゃん嫌い」とか
言われたりなんかしたりしたのか?
「沙奈、沙奈どこにいんの!?」
「・・・嘘だよ、嘘。こんな所にいねぇよ・・・
つか、こっちが聞きてぇよ、何で沙奈ちゃんいねぇの?」
「・・・別に・・・」
「お、おい・・・」
やっぱりおかしい。
いつもの裕大なら何かあったら俺に
ウザイくらい話し始めるのに、今日は違う。
病気でもなさそうだけど・・・
そんな事を考えながら俺は、
裕大の背中を見ながら学校に向かった。