初恋
***
部室の中に入ると、もうすでに沢山の奴が来ていた。
本当なら、裕大は五月蝿いくらい皆に話しかけるのに、
今日は話すらしなかった。
周りの奴らもそのことに目を丸くするくらい驚いていて。
話しかけなくてはやっていけなかった。
「ゆ、裕大・・・?腹でも、痛いんか?」
「それとも沙奈ちゃんに嫌いとか言われたか!?」
ガヤガヤと言われている最中、
裕大はチャッチャと着替えて部室から出てしまう。
前から裕大の事を知っていた准でも、
驚きを隠せないでいる。
いつもとは違う状況に皆は
さっきまでの明るさが消えていってしまった。
・・・俺が何とかしなくちゃなんねぇのは分かってるけど・・・
こう、いつも何だかんだで、
周りをまとめてくれる奴がこんなにテンションが下がってちゃ
俺もどうすることもできねぇよ・・・
「悼矢、今日の裕大変だけどお前しらねぇの!?」
「おー・・・何も話してくんねぇし・・・
多分、沙奈ちゃんの事だと思うけどさ」
「俺が、話聞いてくるわ」
准がロッカーのドアを閉めながら言う。
「あーゆー奴には、無理矢理話をしてもらうしかねぇんだよ」
「そうかもだけ、ど・・・」
「俺たちが何も知らなくてイライラされて、
キレられても、困るのは俺たちだろ?」
「まぁ・・・」
「だったら俺が話し行く」
ため息をつきながら准は裕大の元へ行く。
俺たちは准に頼むしかなかった。