初恋



***



「沙奈ちゃん、水~~・・・って・・・

いないっけな・・・」


裕大に、沙奈ちゃんが臨時マネージャーではなくなったと告げられてから、


皆は



“沙奈ちゃん”



という回数が増えていった。





そして―




沙奈ちゃんがいなくなった事によって、

俺らの歯車は少しずつおかしくなっていた。



「悼矢、お前沙奈ちゃんと仲良かったんだから、

何とかしてくれよー!」



「んなこと言ってもなぁ・・・」


「あ、准は中学の時から知ってたんだよな?

言ってみてくれよ!」




「馬ぁ鹿。

俺だけが頼んでもしょうがねぇだろ?


頼むならお前らも行かなきゃだろ」



「ん~・・・」




最近、裕大が休憩時間になると、

誰かに電話しているのが気になっている。







前はあんまり携帯を弄らなかった裕大が、

携帯を触るようになっていた。



「なぁ、裕大の奴また電話してんの?」





「・・・そーみてぇだな」




暑さを凌ぐために、

皆家から持参してきた団扇でパタパタと仰ぐ。




近くに居た奴らと一緒に裕大を見ていると、

心配そうな顔をして電話をしている。





准も電話している理由は分からないらしい。




聞いてみようかと思ったけど休憩中、

ギリギリの時間帯まで電話をしているから、

なかなか話を切り出せないでいる。









そう考えている時、

裕大の電話は終わってこっちに向かってきた。
< 125 / 364 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop