初恋
***
「沙奈ちゃん、水~~・・・って・・・
いないっけな・・・」
裕大に、沙奈ちゃんが臨時マネージャーではなくなったと告げられてから、
皆は
“沙奈ちゃん”
という回数が増えていった。
そして―
沙奈ちゃんがいなくなった事によって、
俺らの歯車は少しずつおかしくなっていた。
「悼矢、お前沙奈ちゃんと仲良かったんだから、
何とかしてくれよー!」
「んなこと言ってもなぁ・・・」
「あ、准は中学の時から知ってたんだよな?
言ってみてくれよ!」
「馬ぁ鹿。
俺だけが頼んでもしょうがねぇだろ?
頼むならお前らも行かなきゃだろ」
「ん~・・・」
最近、裕大が休憩時間になると、
誰かに電話しているのが気になっている。
前はあんまり携帯を弄らなかった裕大が、
携帯を触るようになっていた。
「なぁ、裕大の奴また電話してんの?」
「・・・そーみてぇだな」
暑さを凌ぐために、
皆家から持参してきた団扇でパタパタと仰ぐ。
近くに居た奴らと一緒に裕大を見ていると、
心配そうな顔をして電話をしている。
准も電話している理由は分からないらしい。
聞いてみようかと思ったけど休憩中、
ギリギリの時間帯まで電話をしているから、
なかなか話を切り出せないでいる。
そう考えている時、
裕大の電話は終わってこっちに向かってきた。