初恋
***
その夜。
あたしはお兄ちゃんの帰りを待っていた。
もう7時だって言うのに・・・
帰ってくるの遅いなぁ・・・
カーテンを少し開けて外を見る。
あ、れ・・・?
玄関の前にお兄ちゃんらしき姿がある。
だけど、家の中には入ろうとはしない。
あたしはカーテンを閉めて、玄関のドアを開ける。
「お兄ちゃん!?」
「・・・あ・・・」
「どうしたの・・・?
早く中に入りなよ・・・暑いでし・・・」
お兄ちゃんはあたしの手を引いて抱きついてくる。
え・・・!?
いきなりの出来事で、声が出せない。
「沙奈・・・」
あたしの名前を呼ぶたび、
抱きしめる力が強くなる。
1つだけ抱きしめられた時に分かった事は、
辛く、寂しい気持ちだった。
お兄ちゃんの気持ちが体中に伝わって、
どうしようもなく苦しくなった。
「どうしたの・・・?」
「充電させて・・・明日からまた、ちゃんと頑張れるように・・・
充電させてくれ・・・」