初恋
あたしはそうするしかなかった。
いつもとは違うお兄ちゃんに、
少し戸惑いながらあたしはゆっくり抱きしめ返した。
数分経ち、お兄ちゃんはあたしから離れてニッコリと笑う。
「あんがとな!!元気出たわっ。
今日の飯何!?」
「今日はね~、親子丼でーす!」
「うは!うまそう!!」
笑顔なお兄ちゃんに答えるように、
あたしも笑顔で答える。
キッチンに向かって、すぐにご飯を温めなおす。
その間に、テーブルの上におかずを並べて、
お昼に煮出しておいた麦茶を出す。
『・・・奈・・』
フッと、誰かに名前を呼ばれた気がした。
誰か、呼んだ・・・?
後ろを振り向いても誰もいない。
「飯、飯~~!・・・どしたん?」
シャワーから出たお兄ちゃんが
リビングに来てあたしに訪ねた。
「今、誰かに呼ばれた気がして・・・」
「え?・・・俺は今来たから呼んでねぇし。
・・・気のせいじゃねぇの?」
「そう、かな・・・」
「つーか、働き過ぎて疲れてんじゃないのか?俺、やる」
「だ、大丈夫だって!
お兄ちゃんは座ってて!」
「そう?最近、母さん仕事で遅ぇし、
家事全般お前にまかせっきりだから・・・
大変だったら絶対言えよ?俺だって、家事出来るし」
「はいはい。分かったから・・・
ほら、出来たよ」
気のせい、だよね・・・