初恋
息を切らしながら
あたしの所にきたお兄ちゃんと准くん。
「悪ぃ・・・射的の屋台探してて
お前のこと置いてっちまってた・・・」
「沙奈ちゃん、ごめんな・・・ほら」
准くんが手を差し伸べてあたしを立たせてくれる。
「あっちゃぁ・・・転んじまったんか?
膝擦りむいてるし・・・」
足に付いていた砂を叩いて痛そうと言うお兄ちゃん。
2人共心配してくれているのに、
あたしは悼矢さんと渡邊先輩の姿を目から離せずにいた。
傷つくのを分かってて見てるなんて・・・
あたしは何しているんだろう・・・
こんなに胸を締め付けられて・・・
一緒に居てほしくないってそう思っているのに―
悼矢さんがとった金魚が渡邊先輩の手に渡される。
渡邊先は喜びを隠しきれなかったのか
悼矢さんに抱きついている。
「・・な、んで・・・」