初恋
あたしの目には涙が溜まり、
視界が歪む。
自分が情けなくなった。
ただ自分が情けなくなって涙が出て来た。
彼にはもう、
彼を想う人がいて、
彼にはもう、
彼が想う人がいて。
やっと気付けた恋なのに、
叶わないものとなってるなんて―
「おい沙奈、なした!?
擦りむいた所が痛いんか!?」
「ち、ちがっ・・・っ・・・」
急に泣いてしまったことで、
お兄ちゃんがかなり焦っている。
あたしの隣にいた准くんは
自分が付けていたリストバンドであたしの涙を拭く。
「どうしたんだよ?・・・あ。」
准くんが地面を見て、何か気付いたかのように声を上げた。
「リンゴ飴、落としたから泣いてたん?」
「え、リンゴ飴?―うわっ、ホントだよ!!
落したんなら言ってくれれば俺買ったのによ!」
2人は悼矢さんと渡邊先輩には気づいてなかった。
泣いてる訳はリンゴ飴ではなくその2人だけれど。