初恋
「行けない理由があるから、
行きたくねぇんじゃねぇの?」
「・・・そんなんじゃ、」
あたしの頭の中に映るのは、
悼矢さんと渡邊先輩。
幸い、今回は渡邊先輩がいないから代理でって頼まれたから、
まだそれはいいけど・・・
“悼矢さん”がいる―・・・
恋と知ってしまった、
あたしの好きな悼矢さんがいる。
あたしは服の裾を掴む。
そんなあたしを見てお兄ちゃんは軽くため息を付く。
「―・・・誰に会いたくないかは知らねぇし・・・
つーか、知りたくもねぇけど・・・」
「え・・・?」
「お前はそいつの為に行くんじゃねぇだろ?
会いたくないのはしょうがないとして、
俺たちサッカー部の為に無理な話を
了解してくれたんじゃねぇの・・・?
違うか?」
「・・・」
「お前がマネジやるって言ってくれた時の気持ちと、
今の気持ち、一緒?」