初恋
side沙奈
気づけば、体が動いていたの。
夏休み前に借りていた本を返して、
また何か借りようかと探していた時、
悼矢さんが頭から水を被って
水道場にもたれかかっていたのを見て、
変だと思ったから―
行っちゃ駄目だって、
行って何も出来ないって、
頭の中ではそう思っていたはずなのに、
体がどうしても悼矢さんの方を向いてしまって。
あんな姿をした悼矢さんを初めて見たから、
あたしは胸を締め付けられる。
行っても自分がまた傷つくだけ。
今日の朝みたいに。
でも―
あたしは図書室を急いで飛び出していた。
走って、
走って。