初恋
やっぱり、いつもと違う。
何があったのか知りたい。
けど、知りたくない。
もしかしたらあたしには関係ないとか言われたくなかったし。
それに・・・
もし、今悼矢さんが渡邉先輩の事で悩んでいたら・・・
あたしは―
「手伝うよ 笑」
「すみません・・・」
横目で見ると、
悼矢さんは髪をかきわけながら水を拭っていた。
か、カッコいい・・・
でも、夏だからってそのままだと風邪引いちゃう・・・
あたしはバックからハンカチを取り出して渡した。
最初、悼矢さんは吃驚していたけど、
ちょっとだけど笑ってくれた気がした。
「あ、と・・・俺大丈夫「じゃないと思、って・・・悩みとか、あるんだったらきっとお兄ちゃん聞いてくれるし・・・
それに、・・・たしもいますし」
“それに、あたしもいますし”
言っていいのか言っちゃ悪いのか分からなくて、
ポソポソというあたし。
本当に、勇気すらない。
今の自分の気持ちなんだから
もっと自信もってもいいのに。
情けない―・・・
そのあとすぐに渡邉先輩が来て、
あたしは逃げるようにしてその場を後にした。
一瞬、悼矢さんの手があたしの腕に触れたのは気のせいだろうか。