初恋
准くんに心配かけちゃ駄目だ。
夏合宿の時も迷惑かけてるし・・・
それにこんな話、
准くんに話せるわけがない。
置いていたバックを手に持って涙を拭く。
「起こしてくれてありがとう。あたし、行くね」
「ちょっと待てよ!
何かあるから、泣いたんじゃねぇのかよ!?」
准くんはあたしの腕を掴む。
あたしは首を横に振った。
「ないよ。小さいゴミが入っただけ!」
「―・・・」
ゆっくり力を抜いてあたしの腕を介抱する准くん。
心配をかけまいと、
あたしは准くんに笑顔を見せる。
「じゃぁね!」
無理矢理作った笑顔。
自分でも引きつっているのではと思った。
逆に困らせてるんじゃないかって。
風が吹く。
風は、夏の生暖かいものではなくなり、
秋のほんのり冷たくなった風になっていた。