初恋
「え・・・?」
後ろを振り返ると、そこには悼矢さんがいた。
「少しくらい休まねぇと・・・
渡邊、沙奈ちゃんまだ慣れてねぇんだから・・・
あれこれ仕事させたら大変になるだろ?」
「あ・・・」
悼矢さんは、あたしを無理やり座らせて、
持っていたスポーツドリンクを突き出す。
「水分とっとかねぇと」
あたしはそのスポーツドリンクを貰う。
また、気を遣わせてしまった・・・
・・・悼矢さんは、いつも周りを見ているんだな。
じゃなきゃ、あたしがこうしてフラフラしてるの分かるはずないもん。
「沙奈ちゃん、気付かなくてごめんね?
あたし全然分からなくて・・・」
「い、いいえ!
あたしこそ、自己管理が不十分で・・・」
あたしは首を大きく横に振る。
渡邊先輩は良かったと、胸を撫で下ろしていた。
渡邊先輩も、本当にいい人だな・・・
自分が悪い事をしたらすぐに相手に謝って。
「悼矢、こんな事にいたのかよー!」
悼矢さんを探しに来たお兄ちゃんが
お弁当を持ちながらこっちに駆け寄ってくる。
「沙奈もいんじゃん!
弁当一緒に食おー!」
「いや、今から夕飯のお買い物に行かないとだから・・・」
「マジで!?
・・・って、お前ちょっと顔青くね?
大丈夫かよ?」
机にお弁当を置いてあたしの頬を触る。
そんなに、心配しなくてもいいのに、
お兄ちゃんは本当心配性だなぁ・・・