初恋
「もー!濡れたじゃない!」
「こんなに暑い日は水浴びが一番なの!
沙奈が倒れたら大変だからさー!」
「あたしはそんな事頼んでない!!
准くんもずっと笑ってないでよ!」
3人のやり取りを見ていて俺は笑う。
だんだん部の雰囲気にも慣れてきた沙奈ちゃんは、
色々な表情を見せるようになった。
裕大の前では特にだけど。
「悼矢も水浴びー!!」
気を抜いていた俺は、裕大に水をぶっかけられた。
「・・・おい!」
「あたしにもかかったじゃない!」
「まぁまぁ・・・」
俺はタオルで髪の毛を拭く。
目の前に居る沙奈ちゃんは髪をタオルで拭かず裕大と話している。
「ね、悼矢タオル貸し・・・」
俺は立ち上がって沙奈ちゃんの髪の毛を拭く。
突然の出来事で吃驚したのか、
後ろを振り返ってくる。
「わ!すいません!!」
「風邪引かないようにな。」
「は、はい!」
「ちょい!タオルくらい俺持ってるし!
沙奈、悼矢の使わんで、俺の使え!」
「はいはい、ありがとうね」
俺は裕大が持っていたタオルを使う。
裕大はお前じゃない!!
とキレていた。
「あたしの事は心配してくれないの・・・?」
俺はすっかり忘れていた。
渡邊の存在を。