初恋
あたしはシャツの裾を強く握る。
泣く事なんかないのに、
泣く必要なんてないのに・・・
「沙奈ちゃん、こっち座って食べよーぜ」
「え・・・?」
准くんがあたしの傍まで来て腕を引っ張る。
「じゅ、准くん・・・っ」
「早く食べないと裕大に全部食べられちまうぞ」
「・・・うん・・・」
あたしは准くんの優しさに助けられた。
あのまま1人で居たら涙を堪えきれずに泣いてた。
「准くん、ごめんね・・・ありがとう」
准くんは鼻を触りながらいいってと言った。
あたしは准くんの隣に座って食べる事に。
悼矢さんの方を向かないように、
准くんの方を向いて食べた。
だって、渡邊先輩と楽しそうに話している姿なんて見たくなかったから。