初恋
side沙奈
今日は練習試合。
何度か、お兄ちゃんの試合は見たことがあるけど、
マネージャーとしてこんなに近くで試合を見る事なんてなかった。
練習試合という事で、あたしは渡邊先輩にスコアブックを頼まれていた。
悼矢さんに教えてもらったから
間違えはしないだろうけど・・・
ペンを持つ手が微かに震えているのが分かった。
緊張、してる・・・
つい先ほど、試合は始まったばかり。
あたし達高校は強豪相手に攻めている。
今ので、お兄ちゃんは3本目のシュート・・・
スコアブックに×を付ける。
サッカーのスコアブックは野球のスコアブックとは違って
どう攻めていったのかや、
シュートをした数、ファールの数など
試合をしっかり見ていないと分からくなってしまう。
試合が終わった後に、ちゃんと思い出せるように書かないと・・・
それにしても・・・なかなかシュートが決まらないな。
「弘樹、ボールの持ちすぎだ!准、もっと広がれって!!」
ゲーム中に何度もお兄ちゃんの声や、
悼矢さんの声が飛び交う。
あたしから見ても皆良い動きをしているのに、
いつの間にかシュートまで持っていけなくなってしまい、
前半は0-0で終わってしまった。
「お前ら、良い動きしてるぞ。チャンスは必ず来る。
後半も攻めを重視にプレイしろ!」
「はい!」