初恋
後半戦。
先取点を取られてしまったあたし達高校は、
焦りを感じ始めていた。
このままじゃ負けちゃう・・・
「右サイドが空いてるぞ!!」
MFである悼矢さんが
右サイドに居るお兄ちゃんにロングパスを出す。
お兄ちゃんは疲れを見せないような走りでボールと取り、
相手ゴールに向かっていく。
あたしの手は汗でぐっしょりしている。
ゴールキーパーと1対1になった時、
スローモーションでその瞬間をみているようだった。
相手の予想をはるかに超えるテクニックで
ゴールキーパーを交わしてシュートをする。
―ピー!!―
「裕大!!」
見事、お兄ちゃんのシュートは敵陣のゴールを破った。
最初に駆け寄ってきたのはパスをした悼矢さん。
あたしの隣に居た渡邊先輩も、
監督も大喜びをしていた。
結局、試合の結果は引き分けとなってしまったけれど・・・
この引き分けは、あたし達にとっては
強豪相手に勝ちとったようなものだった。