君の為に出来る事
彼女の異変に気付いたのは、残業で遅く帰って来た晩の事だった。
いつもなら寝ている筈の彼女が、その日に限ってまだ起きていた。
「た…ただいま」
「お帰り、お疲れさま…」
いつもと変わらない挨拶を交わし、けど、少しぎこちない彼女の口振りがこの時妙に引っ掛かった。
「お腹は?」
「うん、食べてきたから…」
「…そっか」
窮屈だったネクタイをシュルルと外しソファーへ、上着や鞄と一緒に掘り投げる。
彼女は寝るタイミングを逃したのか、しばらくそんな俺の行動を見ていた。
「……相変わらず、忙しそうだね」