ぼくときみの幸福論
やっと動き出した思考。
キスをされていると理解した俺の頭の中には、芽衣のやわらかな唇を受け入れることしかなかった。
何の抵抗もせずに俺はされるがままに。
芽衣はそっと唇と唇を触れさせたまま、目をつむっていた。
俺もつられて目をつむってみる。
太陽の香りが鼻について、心地の良い光が俺たちを包むのがわかる。
いっそ世界の秩序なんかとっぱらって時間を無くしてしまえばいいのに。
この瞬間が永遠に続いたらいいのに。
叶うはずもない願望が頭をかすめる。
それほどまでに芽衣と唇を重ねているこの瞬間は幸福感に満ち足りているのだ。