愛よりも深すぎて
木崎を家まで送り家に戻る。
実家暮らしなので上げ膳据え膳なのだが
この日は食べてきた、と嘘をついた。

俺もさすがに食欲がなかった。

部屋に入り寝転ぶと天井を見つめた。

『…俺なんてこと木崎に話したんだろ…』

独り言を呟く。

墓場まで持っていくつもりだった
俺の秘密。
なんで話したのかもわからない。
あいつに似ていたからといっても教え子に話す話だったのだろうか。

木崎は子供っぽいところもあるが
変に大人びたところもあった。

だがまだ14歳。

セックスについての知識はあるだろう。
親がセックスして自分が生まれたことでショックを受ける年頃だ。

木崎は俺に好意を抱いていたのには気づいていた。
その好意は恋愛なのか教師としてなのかは別として…
その好意を抱いていた人間が
女を抱いて妊娠させて中絶させたという事実を
あの子はどう受け止めたのだろう。

『木崎、泣いてたな…』

あの涙の意味も…
汚れた大人の俺にはわからない。
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