愛よりも深すぎて
木崎が高校3年になった頃。

俺は見合いをすることになった。

2つ下の公務員の人だった。

見合いして3か月。
結婚する方向で話が決まった。

木崎に言えずにいた。

が、どこからか聞き付けたらしい。

木崎が学校へやってきた。

部活を見に来る、といいながら
多分俺に事情聴取だろう。

生徒たちが帰ると
『さて、先生。聞いたよ。』
ニヤニヤしながら聞いてきた。
『どこで知り合ったの。』
『見合いだよ』
『なーんだ、つまんない』
『なんだよ、つまんないって。』
『だって…』
なにか物言いたそうだった。
『でもいい人なんでしょ?』
『見合いして3か月くらいで結婚決めなきゃならなくて。
これでいいのかな~と思ったりする』
『…そんなもんなんじゃない?』
またこいつは大人びたことを言い出す。
『いよいよ年貢の納め時でしょ。』
木崎はニコニコしている。
『あのさぁ、見合いでも先生のプロポーズ受けてくれる人なんてそうそういないんだからさ。
ある意味救世主だよ。』
『お前さぁ…』
俺は木崎の腕を掴んでいた。
びっくりしたように木崎は俺を見ていた。
しばらく目があった。

すると木崎は俺を抱き締めた。
< 50 / 86 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop