愛よりも深すぎて
『先生。』
木崎はさっきまでの口調と変わり凜とした口調で俺を呼んだ。







『奥さんになる人に
これ以上秘密を作らないで』








木崎の顔を見る。
俺をにらむような目で見ていた。

俺があの事を話していないこと、
俺が今から木崎にしようとしていたこと、
わかった上のことばだった。

『…すまん。木崎。』
『先生、かなりのマリッジブルーだねぇ。』
そういってケラケラ笑う。

『さて、先生が結婚するなら
私も安心してここから離れられるよ。』
木崎はおどけたように言った。
『え?』
『大学、決まったんだ。遠くへ行く。
卒業してからも戻ってくるかどうかわからない。
お袋の側にいたくないし』
『そうか…』

木崎のお母さんは精神疾患を持っていた。
家出したり自殺未遂したり…
そのお母さんの側にいたくないのだろう。

『結婚式呼んでね~(笑)
奥さんに先生の扱い方教えないと(笑)』
『なにいってんだ、バカ』
『お幸せにね』
そういうとヒラヒラ手を振り帰っていった。

木崎、俺はこの時、お前に甘えていたと思う。
本当はお前に側にいてほしかったんだと思うんだ。

木崎に対して恋愛じゃないと思ってたけど
少しだけ女として見ていたのかもしれない。

俺にとってお前は特別な女だから。
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