愛よりも深すぎて
4月に新任校へ移り、慌ただしい日々を送っていた。

木崎も大学へ入り独り暮らしを始めているはずだ。

そんなことを思っている頃木崎から葉書が届いた。

新しい住所を知らせてきた。

『新婚生活はどうよ?
こっちは一人なのに(笑)
まぁ快適ですが。
地元帰ったときは会いたいですね。』

そんな言葉が書いてあった。

佳子は
『木崎さんて結婚式にもきてたよね?』
と葉書を見ていっていた。
『あぁ。』
『問題児だったの?』
『あぁ、こいつ一時期不登校してさ。
色々大変だったんだ。』
その事で木崎との間にあったことはいってない。
もちろんあの事も胸に秘めたまま俺は結婚した。

俺はずるいと思う。

結婚するときにいつか木崎がいった
『私だったら話してほしい』
ということばがよぎったが
俺は佳子には話さないと決めた。

木崎に話せたから。
木崎にだけは俺の罪を知ってほしかったから。

もう誰にも話さなくていい。
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