愛よりも深すぎて
家に帰ると佳子が待っていた。

佳子も飲み会だった。

『お帰り』
と声をかけてくる佳子。
『ただいま』
と答える。

『どうだった?楽しかった?』
『あぁ。昔の教え子だったから忘れてる子もいたけど…』
『…木崎さんも一緒?』
『…あぁ。あいつのおかげで助かったよ。』
『なんで?』
『木崎には老人介護してる気分だ~といわれたけど
あいつが色々気遣ってくれて
ほぼ全員思い出した。』

『ねぇ。いつも思ってたんだけど
木崎さんと昔何かあったの?』
佳子が酔っているせいかズバリ聞いてきた。

『何かって?』
『付き合ってたとか』
『ないない。だって15も下だぞ。
ガキでしかない。
あいつ今彼氏もいるし。』
そういうと彼氏が俺と同じ歳だと聞かされたことを思い出した。
今この歳で出会っていたら
付き合ったりという可能性も在ったのだろうか。

『なんかね、木崎さんのことはよく話しにも出てくるし
昔なんかあったのかなとずっと思っててさ。』
『あいつはね。
色々辛い目に合ってきてその度に俺に頼ってたから。
ほんとは弱いくせに虚勢張ってるやつだし。
どうしても可愛い教え子なんだ。』

本音ではあった。

『若い頃した苦労は、ってやつだよ。
俺も教師として未熟だった頃に
俺なりに向き合った子だったからな。』

苦しい言い訳だった。

今日あいつは俺の重荷を一緒に背負う、といった。
木崎を支えたのは俺じゃない。
俺が木崎に支えられてた。

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