とっておきの恋
「エリちゃんはそんなこと考えないで。いいじゃん、今俺が付き合ってるのはエリちゃんなんだから、昔のことなんか言わないで」

安部くんはあたしのあごを人差し指で支え、その唇にふたをした。

軽く唇に触れるだけのいつものキスではなくて、長く濃いキス。

ぎゅっと抱きしめられたまま、あたしは目を閉じた。

「俺のこと信じて…」

どうしてだろう。

涙が止まらなかった。

甘酸っぱいはずのキスはなんだか塩辛かった。
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