とっておきの恋
放課後、誰もいない教室。


「今日部活ないからさ、一緒に帰ろう」

安部くんがあたしのカバンをつかんだ。

「いいよ、自分で持てるって」

取り返そうと手を伸ばすけど、カバンは頭のはるか上。

ちっとも届かない。

「俺、エリちゃんの王子様だから」

そう言って安部くんは笑う。



だからあたしはズルをした。

両手がふさがっていて無防備な安部くんの胸に抱きついた。



「安部くん、大好きよ」って言葉と一緒に。






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