とっておきの恋
安部くんの顔色が変わっていた。

「エリちゃん、それ本気で言ってるの?」

冷静な声だったけど、強い不快感と怒りが伴っていた。

「え…だって、そういう噂聞いたことあるし…」



時間が止まってしまったのかもしれない。

空気が動かなくなってしまった。

安部くんもあたしも、何もかも、とまってしまった。



「最低だな」

小さく、でもよく響く声。

「え?」

「おまえ松原と親友面しといて、そんなこと考えていたのか? 見損なったよ!」



安部くんが怒鳴っていた。

あたしに向けられたつめたいまなざし。

きっと、一生忘れられない。
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