とっておきの恋
「ああ、松原は自分を責めたよ。自分が妹に嘘さえつかなければこんなことにならなかったって…。それからあいつ別人みたいになってしまった。いつも自分を殺して、自分を責めて。当然、俺とのこともそれっきり終わり」

割り切れない怒り。

カオリンがどんなに嘆き、どんなに苦しんだか…。

きっとあたしに想像できるのはほんの一部だけ。

こみ上げてくるものがとまらなくて、胸が苦しくてどうしようもなかった。


「それに俺だって、責任を感じたよ。俺があの日、松原をデートに誘わなければ、あんなことにならなかったって思ってる…」

安部くんの声が震えていた。

時折、声が詰まる。

安部くんもずっと苦しんでいるんだ。

ずっと自分を責めてきたんだ。

あたしはやりきれなかった。

どこにこの怒りをぶつけたらいいかわからなくて、ただただ両方の手をぎゅっと握り締めていた。

「あいつ、エリちゃんに会って、変わったんだ。きっと妹の生まれ変わりのように思ったんだと思う」

少しだけ、安部くんが笑ったように見えた。

「え、どうして?」

「松原の妹の名前もエリちゃんて言ってね。松原エリ。おかっぱ頭でくりっとした目で、顔の感じもよく似てる。松原の妹が大きくなったら、こんな感じになるかなって…」
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