とっておきの恋
「僕、あのとき河辺くんに石投げたじゃないですか。実はあのあと、呼び出されたんです」

知らなかった。

そんなことがあったなんて…。

「訴えてやるって言われました。傷害罪で訴えるって」

「だって、あれは正当防衛じゃない」

「そうです。確かにそうなんですが、相手が悪いんですよ」

遠藤くんは言いにくそうだった。

「どういう意味?」

「河辺くんのお父さんは腕ききの弁護士なんです。まともに裁判をしたら絶対僕が負けます」

「それじゃ…」

「実は僕W大の法学部の推薦狙ってたんです。なんでかそれを河辺くん知っていて。その推薦を辞退すれば訴えなくてもいいって言われて」

「じゃあ、あきらめたの?」

「一般入試で合格すればいいことですし…」

「そんな…」

「僕のことはいいんです。それより、嫌な予感がするんです。もしかしたら、川辺くんは安部くんを陥れようとしているのかも…」

「どうして、安部くんのことを?」

「持田さん気がつきませんでした? 河辺くんが安部くんを見つめる異様な視線に。彼は一番にならないと気がすまない人です。それに最近安部くんが法学部志望だってこと、彼知ったみたいですし…」



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