とっておきの恋
「ねえ、エリちゃん。恨むなら安部っちを恨んでよ。全部安部っちのせいなんだからさ」

そう言いながら、あたしの足を足首の方からゆっくりと太ももにかけて撫で回した。

あたしがびくっと震えるたびに、口元が緩むのがわかった。

メガネの奥の目が、異様な光を放っている。



逃げなきゃ。

早く逃げなきゃ。



あたしはチャンスをうかがっていた。

ここが旧校舎なら、数メートル移動すれば外に出られる。

彼が油断した隙に、まずこの部屋から出よう。

叫び声をあげれば誰かが気づくかもしれない。
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