とっておきの恋
「安部っちから聞いたの。エリ、河辺に脅されたとき、最後まで私のこと守ろうとしてくれたんだって。バカよ、エリ」

そう言って、カオリンはまたあたしのことを抱きしめた。

「私ね、妹が死んだこと、ずっと自分のせいだって思ってた。だから私は幸せになる資格はない。私は苦しみながら生きていかなきゃならないってずっと思ってた。でもね、エリの気持ちを知って、ちょっと考え方が変わってきた。死んだ妹は、私が辛い思いをして生きているって思ったら、悲しむかもしれないって。だって、もし私が死んで、妹が生き残っていて、妹がそんなふうに生きていたら、私耐えられないから」


「そうだよ、カオリン。カオリンは幸せにならなきゃだめなの」


あたしはカオリンの背中をぽんぽんとさすった。

そしたら、カオリン、ぱっと顔を赤らめた。

「やだ、なんだかエリ。お姉さんみたいじゃない」

「いいでしょ。あたしたちは親友なんだよ。時には姉に、時には妹に。ま、身長的にはあたしは永遠の妹だけどさ」

カオリンが笑っていた。

とても幸せそうに。

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