とっておきの恋
振り向きざまに見えた安部くんの手は、大きくて、関節が太くて、きれいな爪をしていた。

その手が私の制服に触れているって考えたら…。

どうしようもなく胸が熱くなって、呼吸が乱れた。



「よろしく…ね」



消え入りそうな声でそう答えるのが精一杯のあたし。

あたしの思いを隠すかのように、できる限りの作り笑顔。



ほっぺたが熱いよ…。



「こちらこそよろしく。楽しみだね、校外学習」



くしゃくしゃな顔して笑う安部くん。

そんな屈託のない顔もたまらなく素敵だなって思う。
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