とっておきの恋
「遠藤、もうちょっとゆっくり歩け~。持田さん、女の子なんだからな~」

河辺くんが後ろを振り返りながら、遠藤くんに声をかける。

「ごめんね、あたしのろくて」

私も必死に歩くんだけど、人をよけながら前に進むからどうしたって遅くなる。



そしたら――。

大きな手があたしの手をくるんだ。

ちょっと骨ばったあったかい手。



「あ、安部くん…!」



安部くんは人ごみからあたしを守るように半歩前を行く。



「はぐれちゃうから、ぎゅっと手握ってて」



あ…。

あたしの手、すごく熱くなってるよ。



ううん、手だけじゃない。

全身から火が出そう。




でも、がんばって握った。



安部くんの手、ぎゅっと。
< 36 / 203 >

この作品をシェア

pagetop