とっておきの恋
「ちょっと! 安部っち、何してんのよー!!!」




向こうから走ってくるのは…



カオリン!!!





カオリンはぜえぜえ言いながらも、ぎろりと安部くんを睨みつけ、ぱしっとその手をはたいた。


「エリは純情な子なんだからね。あんたの気まぐれで、もてあそばないで!」


カオリン、えらい剣幕だ。

それに引き換え、安部くんは舌をぺろっと出して、肩をすくめた。


「まあまあまあ、松原さん。安部っちはエリちゃんがはぐれないようにって親切心で手えつないだだけだからさ」

河辺くんが二人の間に入り、熱くなったカオリンをたしなめる。

「ねえ、エリちゃん。そうだよね」


カオリンは心配そうにあたしの顔を見つめている。


「うん、カオリン。駅の中、すごい人ごみでね、あたしみんなのこと見失いそうになって…」


「本当にそうなの?」


あたしはうなずいた。






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