とっておきの恋
「あ、あたしですか?」


しまった!

ついにふられてしまった。


「はい、お嬢さんですよ。男の子に囲まれて発言しづらかったんでしょ。気がつかなくてすみませんでした」

岡村さんは、心から申し訳なさそうに言う。



いいのに。

全然、ほうっといてくれて構わないのにさあ。

どうして気づいちゃうかなあ。



「えっと…」


あたしはエネルギーを振り絞って頭をフル回転させる。



岡村さんの目に力が入る。


そして、みんなが注目する中、




「あ…忘れました」






フル回転させた頭だったが、何も出てこなかった。

ごめんなさい。




「そ、そうですか。じゃあ思い出したらメールでお問い合わせくださいね」



岡村さんの笑顔が凍りついていた。



さ、さむい。


なんともいえない冷たい空気があたりを取りまいていた。
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